曲芸NO !


いつの頃からか、他のすべての生物と違って人間だけが知能というものをもっているということが、まじめに信じられてきました。けれども人間のゲノムの構造を分析してみると、ハエとたいした違いがないということが明らかになっている今、あらゆる動物がその種なりに知能を発展させていることに、疑いの余地はありません。
知能がないはずの、あるいはひどく劣っているはずの動物が人間の言葉や合図を多少理解し、号令に合わせて飛んだり跳ねたりすることが驚異に映ったのは過去のことです。イルカが人間の合図を理解することがあるのは当然のことですし、それにあわせて飛んだり跳ねたりするのは、捕らわれの身とて不本意ながら従っているだけの話です。
イルカは単純なダシモノにすぐに飽きてしまい、いうことをきかなくなることもあります。そこで多くの曲芸施設の現場で、叩いたり、プールに鉄パイプを投げ込んで威嚇するなどの方法が日常的に行なわれていることも周知のことがらです。いずれにしても、イルカは喜んで芸などやりません。
内田館長はイルカたちに不自然な行為はいっさいさせないと高言し、それを鵜呑みに名古屋港水族館では曲芸はやらないのだと信じていた人もたくさんいます。しかし現に水族館では、ハンドウイルカにジャンプをさせたり、シロイルカにボールをくわえさせたり、「パフォーマンス」の準備が進んでいます。
動物の芸は、偉大なる人間様が暗黒の自然界を服属させ、自由に采配するというストーリーがリアリティをもっていた時代、つまりはヨーロッパなど一握りの地域の人々が「野蛮人」を支配するのが当然と考えていた、植民地主義の時代に対応するものです。
いまや時代は大きく変わりました。地球上のすべての人々が互いに対等に認め合って、協力して生きていかなければならないのと同じ様に、人間もイルカも、あるいはハエもスギの木もキノコも、生物としては等価であり、同じ地球の住人です。
21 世紀は人間が動物を家来として従えるストーリーを必要としません。むしろ、そういうストーリーからいかにして抜け出すか、ということこそ、公共の動物飼育施設が率先して模索すべきことのはずです。

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パンフレット「ちょっと待て!名古屋港水族館」©Delphyne 2001年7月