教育関係裁判の判例
 
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目  次
5 作文を無断修正して文集に掲載
3 体罰後の小学6年生の自殺 4 部活の試合の審判中に死亡
1 学習指導要録の開示請求 2 ゲルニカ訴訟
◎ 関連ホームページリンク集 裁判所主要判決リンク集
 
 作文を無断修正して文集に掲載  (2001年7月25日 大阪地方裁判所)
<判決>

◎ 東大阪市に,計85万円の支払いを命ずる
 生徒の了解を得ないで作文の一部を削ったり,文中の個人名を匿名にしたのは生徒の人
格権を侵害する行為である。

<経過>

◎ 1996年3月に発行された文集「おとなの中学生」で,書いた作文のうち,学校経営につい
 て,教師や教職員組合を批判した部分を中心に,全体の3分の1を削除し,別の作文とつな
 ぎ合わせて掲載された。
◎ 大阪府東大阪市立長栄中学校の夜間学級に在籍していた生徒2人が,勝手に作文の一
 部を削って文集に掲載されたとして,東大阪市を相手に慰謝料など1270万円の支払いを求
 めて訴訟。
◎ 1997年7月の文集で,作文の中で実名にした教師や校長らの個人名をアルファベットに
 直して掲載した。 

<判決の主な理由>

◎ 事実関係の誤りがある場合など,教師は生徒に作文の修正を指導し,指導に従わない時
 は掲載しないことが許される。
◎ 生徒の了解なく,作文を削除,修正し,文集に掲載したのは教師の裁量権を逸脱した行為
 である。


 部活の試合の審判中に死亡 (2000年4月21日 名古屋高等裁判所)
                        (名古屋高等裁判所第二小法廷)
<判決>
◎ 2審・名古屋高等裁判所の判断は正当であり、原告の上告を棄却する
  「倒れた当日の公務が脳内出血を拡大させたとは認められず、発症後ただちに医師の
診察を受けたとしても脳内出血の拡大を防ぐことはできなかったとした、名古屋高等裁判
所の判決は、正当として是認できる」
<経過>
◎ 愛知県尾張旭市の小学校教諭(当時34)が、1978年10月、尾張旭市内の別の
小学校で行われたポートボールの練習試合で審判中に倒れ、手術を受け、約2週間後に死
亡した。診断は突発性脳内出血。
◎ 小学校教諭がポートボールの審判中に脳内出血で倒れ死亡したのは、過労が原因であ
ったとして、教諭の妻が公務災害を申請。地方公務員災害補償基金愛知県支部は、公務と
して認めなかった。
◎ 小学校教諭の妻は、公務と認めなかった処分の取り消しを求めて、1983年に提訴。
一審の名古屋地方裁判所は1989年12月、過労死として認め判決を出した。
◎ 二審の名古屋高等裁判所は1991年10月、「死亡直前の勤務状況は特に過重ではな
かった」と死亡と勤務との因果関係を認めない逆転判決を言い渡した。
◎ 最高裁判所は1996年3月、公務災害の可能性を指摘した上で「審理不十分」とし
て名古屋高等裁判所に差し戻した。
◎ 名古屋高等裁判所は1998年3月、再び一審の判決を取り消す判決を言い渡したた
め、再度上告をした。
<判決の主な理由>
◎ 審判によって症状を悪化させたとは言えず、公務によって診察、治療の機会を失い、
死に至ったとは認められない。
(朝日、毎日、中日、読売、日本経済新聞)
 
 ゲルニカ訴訟       (1999年11月26日 福岡高等裁判所)
<判決>
◎ 第1審判決を支持し、原告側の控訴を棄却する。
 「卒業式の退場時に右手を挙げた行為は、子供たちを教育すべき教師としてふさわしい
行為とはいえず、不適切である。」
<経過>
◎ 1988年3月、福岡市立長尾小学校の卒業式で、卒業生たちが作成した卒業記念作
品「ゲルニカ」(ピカソ)の模写絵が正面ステージに掲げられなかった。これに対し、一部
の児童が君が代斉唱の際に、歌えないといって着席するなど反発したために、卒業式が混
乱した。その際、教師が児童に呼応するように着席したり、退場の際に右手こぶしをあげ
るなどの態度をとったことについて、福岡市教育委員会が1988年6月に、地方公務員
法に基づき、教諭を戒告処分にした。
◎ 教諭は、処分の取り消しを求めて控訴した。
<判決の主な理由>
◎ 処分に事実誤認はなく、社会通念場著しく妥当性を欠くものではない。
◎ (卒業式当日に着席したことについて)客観的に見て、児童に呼応するかのように行
われたと認められる。
◎ (右手こぶしを振り上げて退場したことについて)来賓や保護者に抗議ないし勝利の
意志を表現したと評価すべきである。
◎ (校長先生のような人間にはなりたくないなどとした児童の抗議については)旗が正
面にはれない理由を、説明しなかった責任は教諭側にもあり、この観点から児童の発言が
正当化されることがあっても、着席や挙手まで正当化される理由とはならず、教師として
ふさわしい行為とはとうていいえない。
(中日、日本経済新聞)
 
 体罰後の小学6年生の自殺 (2000年1月31日 神戸地方裁判所)
                          (神戸地方裁判所姫路支部)
<判決>
◎ 兵庫県龍野市に約3,790万円の支払いを命じる。
  「自殺が予測されるか否かにかかわらず、担任教諭が謝罪するなどの適切な措置をと
って精神的衝撃を緩和する努力をしていれば、自殺を防止できたがい然性が高い。児童の
精神的衝撃を緩和する努力は当然の責務であり、努力しなかったことは安全配慮義務違反
に当たる」
<経過>
◎ 1994年9月9日午後3時ごろ、龍野市立揖西西小学校6年生男児(当時11)が、
放課後の教室で運動会のポスターを製作していた。
◎ ポスターの書き方を担任の男性教諭(46)に質問したところ、担任は「何回同じこ
とを言わすねん。」といって怒鳴り、ほおと頭を平手で数回にわたり殴った。
◎ 6年男児は9日夕、自宅の裏山で首をつって死んでいるのが発見された。
◎ 1995年2月担任教諭は、龍野市教育委員会より文書訓告を受けた。その後3月に
暴行罪で略式起訴され、罰金10万円の略式命令を受けた。
◎ 6年男児の両親が2年後の1996年、「首をつって自殺したのは、担任の男性教諭の
体罰が原因」として、龍野市を相手に7,035万円の損害賠償を求め訴訟した。
<判決の主な理由>
◎ (死亡の原因は)現場の状況から自殺と認められる。
◎ (動機については)自殺したのは暴行の約1時間後で、他の動機が存在しない。理不
尽な暴力を振るわれたと感じ、自殺を決意しかねない危険な精神状態に陥った。
◎ 体罰は感情任せの暴力であり、子どもの自殺が社会問題になる中、教師が問題意識を
当然持ちうる状況にあった。
◎ 懲戒として体罰をした場合でさえ、子どもの心身に重大な悪影響を及ぼすため謝罪が
必要である。
◎ 学校側の事後対応は、両親の精神的苦痛を増大させた。
 
 ゲルニカ訴訟       (1999年11月26日 福岡高等裁判所)
                (2000年09月08日 最高裁判所)
<判決>
◎ 第1審判決を支持し、原告側の控訴を棄却する。(福岡高裁)
 「卒業式の退場時に右手を挙げた行為は、子供たちを教育すべき教師としてふさわしい
行為とはいえず、不適切である。」 (中日新聞
◎ 第2審判決を支持し、原告側の上告を棄却する。(最高裁)
 「主張は事実誤認などで上告理由にあたらない」
<経過>
◎ 1988年3月、福岡市立長尾小学校の卒業式で、卒業生たちが作成した卒業記念作
品「ゲルニカ」(ピカソ)の模写絵が正面ステージに掲げられなかった。これに対し、一部
の児童が君が代斉唱の際に、歌えないといって着席するなど反発したために、卒業式が混
乱した。その際、教師が児童に呼応するように着席したり、退場の際に右手こぶしをあげ
るなどの態度をとったことについて、福岡市教育委員会が1988年6月に、地方公務員
法に基づき、教諭を戒告処分にした。
◎ 教諭は、処分の取り消しを求めて控訴した。
<判決の主な理由>
◎ 処分に事実誤認はなく、社会通念場著しく妥当性を欠くものではない。
◎ (卒業式当日に着席したことについて)客観的に見て、児童に呼応するかのように行
われたと認められる。
◎ (右手こぶしを振り上げて退場したことについて)来賓や保護者に抗議ないし勝利の
意志を表現したと評価すべきである。
◎ (校長先生のような人間にはなりたくないなどとした児童の抗議については)旗が正
面にはれない理由を、説明しなかった責任は教諭側にもあり、この観点から児童の発言が
正当化されることがあっても、着席や挙手まで正当化される理由とはならず、教師として
ふさわしい行為とはとうていいえない。
<参考>中日新聞(1999/11/26)  毎日新聞(2000/9/8)
(中日、日本経済新聞)
 
 学習指導要録の開示請求(1999年11月25日 大阪高等裁判所)
<判決>
◎ 第1審の神戸地方裁判所の判決を変更し、全面開示を命じる。
 「開示すれば生徒と教師の信頼関係が破壊されるという主張は、開示を拒む理由になら
ない」
<経過>
◎ 1993年2月、西宮市個人情報保護条例に基づき、西宮市立小中学校の児童生徒や
卒業生ら6人が、「学習指導要録」と「調査書(内申書)」の開示を、西宮市教育委員会に
請求した。
◎ 西宮市教育委員会は、調査書(内申書)の全文と学習指導要録の一部を非開示とした。
◎ 1995年、非開示に対し、違法であるとして、開示を求めて訴訟した。
◎ 1998年3月、第1審の神戸地方裁判所は、「学習指導要録や調査書(内申書)のう
ち、客観的事実の記載部分を開示しなかったのは違法。所見欄など教師の主観的評価を含
む記載を開示すると、生徒や保護者らの反発を招いて信頼関係を損ない、トラブルにつな
がる可能性があるとして、教師の主観的評価を含む部分は非開示」とした。
<判決の主な理由>
◎ 西宮市個人保護条例は、各個人が行政機関の管理する自分の情報に近づき、訂正・削
除する権利を保障している。
◎ 開示を拒める条件は、開示した場合の弊害が現実的・具体的で、客観的に明白である
ことを要する。
◎ 非開示とされた学習指導要録や調査書(内申書)のうち、教師の主観的評価を含む所
見欄などについて、「教育上の評価は、本人や保護者からの批判に耐え得る適正なものでな
ければならず、教育は生徒や児童の長所を伸ばすとともに、短所や問題点を改善するもの
である」と判断。
◎ 「教育は人格の歓声を図るもので、性格など所見欄にマイナス評価が記載されるのな
ら、日ごろから本人や保護者に同じ趣旨のことが伝えられ、指導されていなければならな
い」
◎ 「日ごろの注意や指導等もなく、マイナス指導が調査書(内申書)や学習指導要録の
みに記載されているとすれば、そのこと自体が問題である」
◎ 「開示によるトラブルを避けるため、適切な表現に心がけ、日ごろから信頼関係を築
くなどして対処するのも教師の職責である」
◎ 「歴史は浅いが、多くの自治体では学習指導要録の開示が開始され、弊害が起きてい
るとはいえない」
<新たに開示を命じられたもの>
◎ 各教科の学習の評定の記録中の「参考事項」欄
◎ 出欠の記録中の「欠席等の主な理由」
◎ 行動及び性格の記録
◎ スポーツテストの「備考」欄
<参 考>
◎ 1992年6月から、大阪府箕面市が学習指導要録の全面開示にふみきった。
(朝日、毎日、中日、読売、日本経済新聞)
 
 <その後>
◎ 11月30日、西宮市教育委員会は上告を断念。所見欄を含めて学習指導要録の全面
開示の方針を示した。
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関連HPリンク集
裁判所
 


主要裁判判決

裁判所名 事件名 原     告 判   決
札幌地方裁判所 公務外認定処分取消請求事件 北海道虻田郡a町立j小学校の教頭の妻 公務外認定処分を取り消す
札幌地方裁判所 懲戒処分取消請求事件 北海道内の公立小中学校に勤務する北海道の地方公務員 原告らの請求をいずれも棄却する